前回に引き続き、中華料理を食べたときにどれくらいの栄養素が摂取できるのか、グラフで分かりやすく解説していきたいと思います。今回は中華の麺料理を調べてみました。なお、栄養摂取状況の算出における前提条件等は別記事でまとめてありますのでご確認ください。
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今回は30~49歳の男性が1日に摂取すべき栄養素として制定されている数値を基に計算していますが、18~29歳や50~59歳の方もさほど変わりはありません。また、鉄分は女性の方が多く摂取する必要性がありますが、それ以外は基本的に男性より少ない栄養量に設定されていますので、女性の方も参考にしていただけるかと思います。
担担麺
中国・四川発祥の麺料理で、胡麻風味の辛いスープに茹でた中華麺を入れ、甜麺醤で味つけした豚挽き肉などをのせたものです。カップラーメンでも多くのメーカーから発売されており、人気の高いラーメンですね。こちらも麻婆豆腐と同じく、日本に輸入される際にアレンジされたものであり、本場四川では汁なしのものを指します。その昔、天秤棒を担いで売り歩いていた料理のため、スープを持ち歩くのが困難であった事から、汁なしが原型とされています。
材料
並盛の担担麺に使われている食材は下記のように想定しました。
基本的な食材として、
- 豚挽き肉 60g
- 野菜類
チンゲン菜 50g
長ねぎ 20g - 豆乳 100g
- 中華麺 150g
調味料として、
グラフ
この食材を基に算出した栄養摂取状況は下記の通りです。
今回、麺料理の栄養価を評価するにあたり、担担麺のようなラーメンについては、スープを半分は飲み、半分は残すという前提で計算しています。担担麺については、豆乳と調味料を材料の項目に記載している量の半分のみ加算しています。
中華麺には意外と豊富にたんぱく質が含まれており、豚挽き肉と併せて、十分な量のたんぱく質が摂取できます。スープに加えている練り胡麻の栄養価が高く、ミネラル類において顕著に表れています。また、チンゲン菜はビタミンA・K・C・葉酸など、不足しがちな栄養素を補ってくれています。全体で見ると、栄養価はかなり高いと評価できると思いますが、スープを全部飲むと1日分の80%程度の塩分量となってしまいますので、注意が必要です。
ジャージャー麺
豚挽き肉を黄醤と呼ばれる豆味噌や甜面醤で炒めて作った肉味噌を、茹でた麺の上に乗せた料理です。この肉味噌を「炸醤」と書いて、「ジャージアン」と呼びます。これが日本に入ってきたときに、「ジャージャー」と変化しました。中国山北部にある東省発祥の料理ですが、中国以外にも日本・台湾・韓国でも食べられており、各国でアレンジされています。中国の炸醤は麻婆豆腐などの料理に使われるので非常に塩辛く、例によって日本の甘辛いそれとはかなり異なるものです。
材料
並盛のジャージャー麺に使われている食材は下記のように想定しました。
基本的な食材として、
- 豚挽き肉 100g
- 野菜類
長ねぎ 20g
きゅうり 50g - 薬味
にんにく 5g
しょうが 5g - 中華麺 150g
調味料として、
- 甜麺醤 大さじ1
- 豆板醤 小さじ1/2
- 中華だし 小さじ1
- 片栗粉 小さじ1
- 砂糖 小さじ1
- 醤油 小さじ1/2
- ごま油 小さじ1
グラフ
この食材を基に算出した栄養摂取状況は下記の通りです。
ジャージャー麺に関してはスープがないので、材料の全部を摂取するものとして計算しています。たんぱく質・脂質・炭水化物の3大栄養素は十分な量含まれています。豚挽き肉が多めなので、ビタミンB群やナイアシン・パントテン酸の数値は高くなっています。きゅうり・ねぎの野菜類についても、若干ではありますが、ビタミンK・C・葉酸を補ってくれています。味付けのない麺と野菜を味の濃い肉味噌で和えて食べるという性質上、塩分量が高くなっていますので、他の食事では抑えめにするなど、注意が必要です。
ワンタン麺
エビやねぎ、肉を包んだワンタンをラーメンの具として加えた料理です。日本以外では中国、シンガポール、マレーシアのワンタン麺が有名です。ワンタンは中国語で「雲吞」と書き、中国の広東地方で生まれたと言われています。ですが中国全土で見ると、ワンタンと麺を一緒に食べる習慣はなく、麺もワンタンも独立した料理と考えます。確かに炭水化物を重ねるタイプの料理なので、疑問符が付く人も多いかと思います。発祥地の中国南部・広東省、香港ではワンタン麺はよく食べられており、具として主にエビが入り、肉は僅かに入る程度です。ですが今回は肉のワンタンで計算したいと思います。
材料
ワンタン麺に使われている食材は下記のように想定しました。
基本的な食材として、
- 豚挽き肉 40g
- 皮 5枚
- 薬味
にんにく 5g
しょうが 5g
長ねぎ 10g
メンマ 20g - 中華麺 150g
調味料として、
- 酒 大さじ1
- 醤油 大さじ1
- 中華だし 小さじ1
グラフ
この食材を基に算出した栄養摂取状況は下記の通りです。
ワンタン麺もスープは半分残す前提で計算しています。たんぱく質は十分な量ですが、脂質・炭水化物は少なめです。麺とワンタンという炭水化物中心の料理である上、全体的に材料が少ないので、栄養価の平均水準が低く、ビタミンA・D・K・C・ビオチン・カルシウム・ヨウ素など、不足している栄養素も多くなっています。こちらもスープを全部飲むと1日の70%程度の塩分を摂取してしまうことになるので、注意が必要です。
酸辣湯麺
中国は四川省、湖南料理の中華スープである酸辣湯に麺を入れた料理です。酸辣湯は豆腐・きくらげ・たけのこなどの具材を、酢の酸味と唐辛子や胡椒の辛味が効いたスープで煮込み、とろみをつけた後、卵を加えて完成です。本場中国や台湾では年間を通して食べられる定番メニューで、麺を入れるのは日本流のアレンジです。もちろん麺を入れた酸辣湯麺として栄養価を計算します。
材料
酸辣湯麺に使われている食材は下記のように想定しました。
食材として、
- 鶏挽き肉 60g
- 卵 1個
- 絹豆腐 50g
- その他食材
しいたけ 20g
きくらげ 10g - 中華麺 150g
調味料として、
- 醤油 大さじ1
- 中華だし 小さじ1
- 片栗粉 大さじ1
- 酢 大さじ2
- ラー油 小さじ1
- 胡椒 小さじ1
グラフ
この食材を基に算出した栄養摂取状況は下記の通りです。
酸辣湯麺についてもスープを半分残す前提で計算しています。麺・鶏挽き肉・絹豆腐が入っていることにより、たんぱく質は非常に豊富です。一方、炭水化物は少なめになっています。栄養価の高い食材が多く入っているため、全体的に数値の高いグラフになっており、他の料理では不足しがちなビタミンDも卵ときくらげによって高い数値になっています。しかし、野菜類が入っていないこともあり、ビタミンCについてはほとんど含まれていません。
冷やし中華
冷たい麺料理で、きゅうりやトマト、叉焼やハム、錦糸卵などの色とりどりの具材を麺に乗せ、冷たいかけ汁を掛けたもの。ルーツは中国にあるという説もありますが、一般的には日本で発祥した料理とされます。素麺と並んで夏の風物詩的な料理であり、7月の季語にもなっています。中華料理店では「冷やし中華始めました」という貼紙がよく見られ、各所でネタにもされていますね。
材料
冷やし中華に使われている食材は下記のように想定しました。
食材として、
- きゅうり 50g
- ハム 30g
- 卵 1個
- トマト 50g
- 中華麺 150g
調味料として、
- 酢 大さじ2
- 砂糖 小さじ2
- 醤油 大さじ1
- ごま油 小さじ1
グラフ
この食材を基に算出した栄養摂取状況は下記の通りです。
冷やし中華については、調味料の全量を摂取する前提で計算しています。脂質が少なめですが、たんぱく質と炭水化物は十分な量含まれています。全ての栄養素が10%以上となっており、極端に少ない部分のないバランスの取れたグラフになっています。ある程度の量の野菜が入っていることが1つのポイントとなっていそうです。ただ、ハムにもかなりの塩分が含まれているため、料理全体の塩分量が多くなっているので注意が必要です。
おわりに
麺類はスープを飲むかどうかで塩分量はもちろん、栄養価もかなり変わってきます。基本的には飲まない方が健康的で良いかと思います。麺類でもごはんものでも栄養価の傾向、不足しがちな栄養素は似ていることが分かってきました。次回も中華料理を調べていきたいと思います。