前回に引き続き、丼物を食べたときにどれくらいの栄養素が摂取できるのか、グラフで分かりやすく解説していきたいと思います。前回までは定番の丼物でしたが、今回はご当地の丼物を調べてみました。なお、栄養摂取状況の算出における前提条件等は別記事でまとめてありますのでご確認ください。
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今回は30~49歳の男性が1日に摂取すべき栄養素として制定されている数値を基に計算していますが、18~29歳や50~59歳の方もさほど変わりはありません。また、鉄分は女性の方が多く摂取する必要性がありますが、それ以外は基本的に男性より少ない栄養量に設定されていますので、女性の方も参考にしていただけるかと思います。
生しらす丼
神奈川県の鎌倉・江ノ島・茅ヶ崎の名物として知られている丼です。江の島に行くと、所狭しとしらす丼やその他海鮮丼のお店が立ち並んでいます。一般的なしらす丼は、釜揚げやちりめんが使われますが、神奈川はしらす漁が盛んで、新鮮な生しらすが入手しやすいため、生のままご飯にのせるのが特徴です。ツルっとした食感と潮の香りが食欲を掻き立てる一杯です。
材料
並盛の生しらす丼に使われている食材は下記のように想定しました。
基本的な食材として、
- 生しらす 100g
- ごはん 240g
- 生姜 10g
- こねぎ 10g
調味料として、
- 醤油 大さじ1
グラフ
この食材を基に算出した栄養摂取状況は下記の通りです。
たんぱく質・炭水化物は一定の量が含まれていますが、ごはん以外のエネルギーと脂質は非常に少なく、ヘルシーな丼です。しらすがメイン食材となりますが、特にビタミンD・B12・ナイアシン・葉酸が豊富で、カリウム・カルシウム・リンなどのミネラルも多く含んでいます。また、薬味のこねぎとしょうがは少量ながらビタミンE・Cやマンガンを含み、しらすだけでは心もとない栄養素を補ってくれています。ですが全体的に不足している栄養素が多く、別の食事で補う必要がありそうです。
豚丼
昭和初期に帯広市内の食堂で、炭火焼きした豚肉にうなぎの蒲焼き風のたれを使用した丼を作ったの発祥といわれている丼です。当時、十勝地方では養豚業が盛んにおこなわれていたこともあって、豚肉は身近で手に入りやすかったため、高価なうなぎに代わって提供され始めたそうです。今では全国でも有名なご当地丼の代表格にまでなっています。
材料
並盛の豚丼に使われている食材は下記のように想定しました。
基本的な食材として、
- 豚ばら肉 120g
- グリンピース 10g
- ごはん 240g
調味料として、
- 醤油 大さじ1
- みりん 大さじ1
- 酒 大さじ1
- 砂糖 大さじ1
グラフ
この食材を基に算出した栄養摂取状況は下記の通りです。
たんぱく質・脂質・炭水化物の3大栄養素は十分な量です。豚ばら肉は脂身が多いので、脂質も多くなっています。この丼は実質豚ばら肉とごはんだけのシンプルなものであり、栄養を補う野菜もほとんど入っていないので、偏ったグラフになります。ビタミンB1・B6・B12・ナイアシン・リン・亜鉛・銅などは豊富ですが、ビタミンC・カルシウムを始めとするその他の栄養素は、この1食だけで見ると不足しています。
鯛めし
材料
並盛の鯛めしに使われている食材は下記のように想定しました。
- 真鯛 100g
- 薬味
大葉 1枚
のり 1/4枚
ごま 1g - ごはん 240g
調味料として、
- 醤油 大さじ1
- わさび 少々
グラフ
この食材を基に算出した栄養摂取状況は下記の通りです。
メイン食材が鯛なのと、調味料に砂糖が使われていないため、たんぱく質は十分な量ですが、脂質と炭水化物は少なくなっています。ビタミンD・E・B1・B6・B12・ナイアシン・パントテン酸・ビオチン・カリウム・リン・銅・マンガン・ヨウ素など、多くの栄養素を豊富に含んでいます。また、薬味として使用されている大葉・のり・ごまは少量ですが、ビタミンA・E・葉酸・カルシウム・ヨウ素などを補っています。鯛の栄養価が際立つ一品でした。
深川めし
深川丼とは、あさりなどの貝類と長ねぎを始めとする野菜などを煮込んだ汁物をごはんに掛けたものです。上の画像は同じ材料で炊き込んだものですが、どちらも深川丼あるいは深川めしと呼びます。江戸時代、貝の好漁場であった深川(現在の江東区)の漁師たちが、船上で手軽に食べられる栄養補給食として作ったのが始まりとされています。現在では清澄白河や門前仲町のあたりで、深川丼を提供する料理店が立ち並んでいます。
材料
並盛の深川丼に使われている食材は下記のように想定しました。
基本的な食材として、
- あさり 100g
- 長ねぎ 20g
- 油揚げ 10g
- しょうが 10g
- のり 1/4枚
- ごはん 240g
調味料として、
- 醤油 大さじ1/2
- 味噌 大さじ1/2
- 酒 大さじ1
- みりん 大さじ1
グラフ
この食材を基に算出した栄養摂取状況は下記の通りです。
たんぱく質は含まれていますが、控えめな量です。貝類は今まで紹介してきたような、肉や魚とは含まれている栄養素が少し異なっているようです。まず目を見張るのがビタミンB12の多さです。他にもビオチン・マグネシウム・鉄・ヨウ素が豊富な珍しい料理ですが、ビタミンA・D・E・K・B1・B6・Cなどの主要ビタミンに乏しく、他の食事の際に補う必要がありそうです。
衣笠丼
衣笠丼とは、甘辛く煮た油揚げと青ねぎを卵でとじて、ごはんに乗せた京都発祥のローカル丼です。名前の由来は、衣笠山という標高201mほどの小山からきています。その昔、世を治めていた宇多天皇が、真夏に雪景色が見たいと所望したため、山に白絹を掛けて雪に見立てたという伝承に因んでいるそうです。丼に盛った姿をその時の山の姿に見立て、衣笠丼の名が付いたと言われています。
材料
並盛の衣笠丼に使われている食材は下記のように想定しました。
基本的な材料として、
- 油揚げ 20g
- 長ねぎ 40g
- 卵 1個
- ごはん 240g
調味料として、
- 醤油 小さじ2
- みりん 大さじ1
- 酒 大さじ1
- 砂糖 小さじ1
- 和風だし 小さじ1
グラフ
この食材を基に算出した栄養摂取状況は下記の通りです。
たんぱく質・脂質・炭水化物の3大栄養素はある程度の量が含まれています。肉や魚などの食材が使われていないため、全体的に栄養価は低めですが、卵のおかげでなんとか形になっている印象です。油揚げはミネラル類がバランス良く含まれているのが見て取れます。突出している栄養素があるわけではありませんが、全くない栄養素もないので、バランスが取れていると言えばそうなのかもしれません。
おわりに
有名なご当地の丼を紹介しました。その地方での特産物を前面に押し出した具になるので、バランスよくというよりは偏りがちになると思います。今回で丼シリーズは終わりにして、また別の料理群にフォーカスしていきたいと思います。